研磨剤は、歯の汚れに直接はたらきかけ歯を白く美しくしてくれる成分。製品によって種類や配合量が違い、全く使われていないタイプもあります。
すばやい汚れ落としには優秀ですが、実は誤った使い方をすると逆効果!歯科医院やSNS上などで、「研磨剤なしの歯磨き粉が良い」と聞いて悩んでいる人もいるのではないでしょうか。実際に成分表を見ても「研磨剤」とは表記されておらず、間違って使ってしまわないか不安な人もいるはず。
そこで、
「どんな効果があるの?」
「何て表記されているの?」
「自分には必要なものなの?」
と気になるあなたへ、研磨剤入りの歯磨き粉の正しい使い方や注意点をご紹介。研磨剤なしとの見分け方もお届けします。あなたに合う歯磨き粉を使って、キレイな歯を手に入れてくださいね。
歯磨き粉の研磨剤は「着色汚れ」に効果的
「研磨剤」は削って磨くもの
歯磨き粉に使われている研磨剤は、歯の表面についた汚れを削って磨くのが目的。ステイン(着色汚れ)・ヤニ・歯垢など、食後や喫煙後についた汚れを落とす効果が期待できます。
歯磨き粉にはいろんな種類がありますが、研磨剤が配合されているものは以下のタイプが多め。
- 粒状
- 粉状
- ペースト状
それぞれで削るパワーが違うので、できれば試してみて実感しながら自分に合うものを見つけるのが理想的です。
以前は「歯や歯ぐきを傷つけるから危険」といわれていた研磨剤ですが、現在は大手メーカーが大々的に販売するほど安全性が高くなりました。
歯のエナメル質への磨耗試験の一例として、炭酸カルシウムを研磨剤にした市販の歯磨剤を50年使用しても、実際上はなにも問題にすべき範囲のものではないとの研究結果があります。
※引用元:日本歯磨工業会/歯磨公正取引協議会(2021年2月時点)
このような結果もあり、1995年にはISO(国際標準化機構)で「歯磨剤の物性と安全性」に関する国際規格がスタート。日本で手に入る歯磨き粉は、規格を満たす(研磨力250以下)ものばかりとなっています。
ステイン・ヤニをすぐに落としたい人向け
研磨剤が有効だといわれている歯の悩みはこちら。
- 飲食物の着色汚れ(コーヒー・紅茶・赤ワインなど)
- 歯垢(歯の表面・境目・間にある白いかたまり)
- タバコのヤニ
気になる歯の黄ばみは、これらが主な原因。研磨剤入りの歯磨き粉を上手に使えば、歯のホワイトニング効果が期待できます。
一方、虫歯や口臭に対しての直接的な効果はゼロ。着色汚れや歯垢を取り除けば予防できますが、研磨剤そのものには歯垢を分解させたり菌を殺したりする力はありません。「歯の間にある食べ物のカスを今すぐスッキリさせたい!」と、即効性を求める人にはぴったりです。
ただし、研磨剤は歯磨き粉によって成分の種類や配合量がさまざま。それぞれで削るパワーが違うので、成分表記を見たりできれば使用感を試したりしながら自分に合うものを見つけるのがベストです。
研磨剤入り歯磨き粉は「使用期間・頻度・磨き方」に注意!
「どれがいいの?」と歯磨き粉を選ぶ前に、本当にあなたの歯には研磨剤を使っても問題ないかを考えてみましょう!
長期間ひんぱんに使うと歯が汚れやすくなる
ステイン除去やヤニ取りに向いている研磨剤は、長い間・頻繁に使うと逆効果。歯そのものを削ってしまい、表面のエナメル質に細かい傷がつくおそれがあります。
テフロン加工のフライパンを金物たわしで洗うと、一旦は汚れが落ちてもコーティングはどんどん剥がれていきますよね。同様に、歯にも表面に強いダメージを与えるものはNG。細かい傷がついて汚れがこびりつきやすくなり、歯が黄ばみやすくなります。
エナメル質の下には神経につながる象牙質があるので、削れて薄くなると知覚過敏になる可能性も。また、歯と歯ぐきの間にできた炎症(歯周ポケット)に入り込み、歯ぐきを傷つけるおそれもあります。
研磨剤入りの歯磨き粉を使うなら、「3日に1回」「週に1回」と間隔をあけるのがおすすめ。毎食後の歯磨き粉には、研磨剤不使用もしくは研磨力の弱いタイプを使うと安心です。
ゴシゴシ磨きで歯の劣化を早める
ついゴシゴシと力強く磨いてしまいがちですが、研磨剤入りの歯磨き粉は特に注意!紙やすりで木材を思いっきり削るとすぐに薄くなっていくように、歯の表面も削れやすく傷が深くなってしまいます。
そもそも、歯磨きは歯磨き粉だけじゃなく歯ブラシの硬さや磨くときの圧力も重要。
- 自分に合う歯ブラシを使う
- 正しい磨き方を身につける
細いところまで届く歯ブラシで優しく動かし、表面のエナメル質や歯ぐきを守りながら気になるステイン・ヤニ・歯垢を落としていくのがベストです。
歯磨き粉の研磨剤は「清掃剤」
成分表を見てもカタカナや漢字がずらっと並んでいて、「研磨剤」がどれなのか分かりにくいですよね。
歯磨き粉の主な成分は以下のとおり。
清掃剤・湿潤剤・発泡剤・粘結剤・香味剤・保存料
このうち、研磨剤に当てはまるのが「清掃剤」です。
研磨剤入り歯磨き粉は市販品に多い
そもそも、歯磨き粉は種類豊富で迷いがち。研磨剤入りは、歯科医院ではあまり見かけず、通販サイト・ドラッグストア・スーパーの薬局エリアなどで市販品として販売されています。
有名なメーカーといえば、
- 花王
- ライオン
- 小林製薬
- サンスター
- アース製薬
など。テレビのCMやSNSの広告などでも紹介されている歯磨き粉が多いので、研磨剤を意識していなかった頃に使っている人も多いのではないでしょうか。
ただ、メーカーによっては、研磨剤の危険性を考えて安全確認がとれた種類の研磨成分を配合しているところも。ステイン除去などの効果は期待できますが、絶対に危険!というわけではありません。
研磨成分の種類〜例〜
市販の歯磨き粉を元に、具体的な成分名(太字で表記)をみていきましょう!
成分表は配合量の多いものから先に表示していくルール。汚れを削って磨くパワーは違えど、始めに書いてあるものほど研磨剤がたくさん入っています。
クリアクリーン プレミアム|花王
基剤…水、ソルビット液/清掃剤…含水ケイ酸、Wa顆粒*2、二酸化ケイ素/カルシウム補給助剤…キシリトール/粘度調整剤…無水ケイ酸、CMC・Na/薬用成分…PEG-12、フッ化ナトリウム、塩化セチルピリジニウム/発泡剤…ラウリル硫酸塩/香味剤…香料(プレミアムミントタイプ)、サッカリンNa/清掃助剤…カルボキシメチルセルロースナトリウム、DL-リンゴ酸/吸着促進剤…グリセロリン酸カルシウム/清涼剤…メントール/着色剤…酸化Ti/粘結剤…キサンタンガム/保存剤…パラベン
ピュオーラ 薬用ハミガキ ナノブライト 美白|花王
清浄剤…エリスリトール/基剤…ソルビット液、水/湿潤剤…濃グリセリン、PEG-12/清掃剤…無水ケイ酸、粉末セルロース/粘度調整剤…無水ケイ酸/発泡剤…ラウリル硫酸塩/香味剤…香料(ホワイトミントタイプ)、サッカリンNa/薬用成分…モノフルオロリン酸ナトリウム(フッ素)、塩化セチルピリジニウム(CPC)/光沢剤…フィチン酸液/清涼剤…メントール/粘結剤…CMC・Na/pH調整剤…水酸化ナトリウム液/着色剤…酸化Ti/清掃助剤…無水ピロリン酸Na
つぶ塩|花王
ソルビット液、濃グリセリン、水、炭酸Ca、無水ケイ酸、炭酸水素Na、塩化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、β-グリチルレチン酸、ラウリル硫酸塩、ステアリン酸POEソルビタン、ラウロイルグルタミン酸Na、カラギーナン、CMC・Na、香料(アニスペパーミントタイプ)、サッカリンNa、水酸化ナトリウム液、酸化Ti
薬用クリニカ アドバンテージ ハミガキ|ライオン
湿潤剤…ソルビット液、PG/清掃剤…無水ケイ酸A、無水ケイ酸/発泡剤…ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、POE硬化ヒマシ油、POEステアリルエーテル、ラウリル硫酸Na/薬用成分…PEG4000、ポリリン酸Na、フッ化ナトリウム(フッ素)、デキストラナーゼ(DEX)、ラウロイルサルコシンNa(LSS)/香味剤…香料(クールミントタイプ)、サッカリンNa/粘度調整剤…カラギーナン、アルギン酸Na/安定剤…酸化Ti、DL-アラニン、グリセリン脂肪酸エステル/粘結剤…キサンタンガム/清涼剤…メントール/洗浄剤…テトラデセンスルホン酸Na/コーティング剤…ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド
デントヘルス 薬用ハミガキ SP|ライオン
湿潤剤…ソルビット液、PG/清掃剤…無水ケイ酸A/薬用成分…塩化Na、モノフルオロリン酸ナトリウム(フッ素として1450ppm)、ラウロイルサルコシンNa(LSS)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、酢酸トコフェロール(ビタミンE)、トラネキサム酸(TXA)、オウバクエキス/発泡剤…ラウリル硫酸Na、POE硬化ヒマシ油、POEステアリルエーテル、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液/粘度調整剤…無水ケイ酸、キサンタンガム/粘結剤…アルギン酸Na、カラギーナン/香味剤…香料(メディカルハーブミントタイプ)、サッカリンNa/矯味剤…ミョウバン/pH調整剤…水酸化ナトリウム液/浸透剤…PEG4000/安定剤…酸化Ti/清涼剤…メントール/コーティング剤…イソステアリン酸/緩衝剤…クエン酸Na/保存剤…パラベン
生葉(しょうよう)EX|小林製薬
溶剤…水、PG、エタノール/研磨剤…水酸化Al/湿潤剤…ソルビット液、人参エキス、アセンヤクエキス、ウコンエキス/基剤…無水ケイ酸/薬用成分…塩化Na、トコフェロール酢酸エステル、モノフルオロリン酸ナトリウム(フッ素)、β-グリチルレチン酸、ヒノキチオール/矯味剤:ミョウバン、乳酸Al、桂皮アルデヒド、チョウジ油/清涼剤…ハッカ油、メントール/収れん剤…シラカバエキス、トウキエキス(1)、シャクヤクエキス、ウラジロガシエキス/可溶剤…POE硬化ヒマシ油/発泡剤:ラウロイルメチルタウリンNa/増粘剤…ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム/香味剤…香料(和漢ハーブの香味)/pH調整剤…炭酸Na/安定剤…エデト酸塩、アラントイン/甘味剤…ステビアエキス/防腐剤…パラベン/着色剤…カラメル、黄203、緑3/洗浄剤…ムクロジエキス/渋味剤…柿タンニン
Ora2(オーラツー) プレミアムクレンジングペースト|サンスター
基剤…ソルビトール/清掃剤…シリカ/基剤…水/清掃助剤…PEG-8/湿潤剤…PG/清掃助剤…アルミナ/溶解剤…スルホコハク酸(C12‐14)パレス‐2Na/吸着剤…シクロデキストリン/着香剤…香料(プレミアムミントタイプ)/甘味剤…サッカリンNa/発泡剤…ラウリル硫酸Na/粘結剤…セルロースガム/安定剤…酸化チタン/防腐剤…メチルパラベン
シュミテクト バリア&プロテクト|アース製薬
ソルビット液、濃グリセリン、精製水、含水ケイ酸、硝酸カリウム、ポリエチレングリコール400、フッ化ナトリウム、含水ケイ酸、香料、サッカリンNa、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、酸化Ti、キサンタンガム、l-メントール、水酸化Na
ガム・ウェルプラスデンタルペースト リフレッシュクール|サンスター
基剤…ソルビット液/清掃剤…軽質炭酸Ca、プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド結合無水ケイ酸(バイオニウム)、重質炭酸Ca/湿潤剤…濃グリセリン、PG/粘結剤…結晶セルロース、ヒドロキシエチルセルロース/発泡剤…アルキルグリコシド/香味剤…香料(リフレッシュクールタイプ)、サッカリンNa/薬用成分…モノフルオロリン酸ナトリウム(フッ素)、塩化セチルピリジニウム(殺菌剤CPC)、グリチルリチン酸2K(抗炎症剤GK2)/安定剤…酸化Ti/吸着剤…β-シクロデキストリン(β-CD)/防腐剤…パラベン/清掃助剤…アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液/着色剤…緑3,黄4
歯磨き粉は研磨剤なしが安心!
- 歳をとっても歯をキレイに保ちたい
- 歯磨きで歯や歯ぐきを傷つけたくない
- ゴシゴシ磨いてしまいそうで自信がない
そんなあなたには「研磨剤なし」の歯磨き粉がおすすめです。
研磨剤なしでも着色汚れ・ヤニにはたらきかける
研磨剤なしの歯磨き粉は、成分表に「清掃剤」の表記がなく、元々は歯の質が弱い人や敏感な人のために作られたもの。
・汚れを浮かして剥がす
・表面をコーティングする
このような効果のある成分が重視されており、歯や歯ぐきへのダメージを軽減しながら優しく白い歯に導いてくれます。
例えば、
- ヒドロキシアパタイト
- メタリン酸ナトリウム
- ポリリン酸ナトリウム
- ポリアスパラギン酸
- リンゴ酸
など。成分表には、「薬用成分」「清掃助剤」に表記されていることが多いです。
子どもの柔らかい歯にも安心して使える
研磨剤なしの歯磨き粉は、子どもから大人まで家族みんなで使えるのも魅力的。子どもの歯はまだ柔らかいので、研磨剤が原因で削りすぎてしまうおそれがあるからです。
キッズタイプの歯磨き粉にも「清掃剤」と表記されているものがありますが、歯のダメージを心配するなら避けたほうがベター。研磨剤なしなら磨くときの圧力や時間が気にならず、じっくりと丁寧な歯磨きが身につきやすくなります。
愛用するなら「ホワイトニング歯磨き粉」
そんなあなたにおすすめしたいのが研磨剤なしのホワイトニング歯磨き粉です。
研磨剤なしの歯磨き粉は、清掃剤が配合されていない分ステインやヤニが落としにくいのがデメリット。いくら代わりの成分があるといっても、あまり効き目がないかもしれません。
そこで、おすすめしたいのが研磨剤なしの歯磨き粉で2回歯磨きをすること!
1回目|食後の食べかすや口内の粘り気をとる
2回目|ホワイトニング歯磨き粉で汚れを落としてコーティングする
このダブルブラッシングで、黄ばみ・虫歯・口臭・歯周病・歯肉炎などを予防しながら美しく白い歯を目指すのがベストです。
ただし、ホワイトニング歯磨き粉にも研磨剤が使われているものがあるので注意!
- 研磨剤
- 着色料
- 漂白剤
- 発泡剤
- 合成界面活性剤
などが「不使用」と書かれているもので、メーカー独自で開発された特殊な薬用成分や、体内に入っても安心の天然由来成分(オーガニック成分)が配合されているものがおすすめです。小さな子どもにも使えるので、お家にいながら家族みんなで美白が目指せますよ。
まとめ
研磨剤は製品によって成分が違い、いろんな種類があることがわかりましたね。どうしても使うなら、回数は少なめに。歯を守るために、正しい歯ブラシを選んで正しい磨き方を身につけることが条件です。
安心しながら白い歯を目指すなら、研磨剤なしの歯磨き粉でダブルブラッシング!2回目は天然由来成分の体に優しいホワイトニング歯磨き粉を使って、汚れをしっかり落としつつ歯のいろんなトラブルを予防しましょう。